
<横浜17km>と書かれた標識が見えた。
もう寄り道はしない。
今度こそ、あと17kmちょいでゴールだ。
日吉、綱島、東神奈川・・・馴染ある名前が次々と表示されていく。
しかし、見えてくる風景は一向にオイラに郷愁感を与えてくれなかった。

ネットで情報を得ているから、
8年間の日本の変化はなんとなく予想できるよ、
と思っていたけど、
やっぱり実際8年経った街の変化は
オイラの予想を超えたものだった。
特に横浜駅に到着した時に、それを強く感じた。
学生時代からずっと、毎週最低でも1回は訪れていた横浜駅周辺。
めっちゃ馴染深い地のはずなのに、
まるで、別の街に来たような想いにとらわれてしまった。

風景というか、雰囲気がガラリと変わってしまっていたのだ。
高島屋、ジョイナス、岡田屋モアーズ・・・
確かに昔からその名前のビルはあったが、
今見えるこんなビルじゃなかった気がする。
何よりも、西口から東口へ向かう連絡通路の箇所が工事中であり、
そこにあったはずの建物がごっそり無くなっていたことに、
ものすごく違和感を覚えてしまった。
たぶんこうなっているだろうという想い、
それに対して、実際にこうなってしまったリアル。
そのギャップ。

街はやはり変化しているのだ。
だから、街の風景に郷愁感なんて伴いづらいものだったのだ。
そうか、
なんか、郷愁感と共に<戻ってきた>という感覚が湧き起こり、
それで、旅が終わったことを実感すると思っていたのだが、
そういうことでもないんだな。

区切りをつけるために
日本に帰国してからは、
「旅の終わりを感じれるもの」
を無意識に追い求めてきたけど、そういうことじゃなかったのだ。
やはり、日本は98番目の国の旅だったのだ。
そう、終わりの国ではなく、98番目の国を楽しむ旅の続きだったのだ。

そして、ここで終わりじゃないのは、確かだ。
もう相棒のファニーバニーに乗らなくなるワケではなく、
海外に出なくなるワケでもないのだ。
う~む、では、終わるとは何が終わるのだ?
よくよく考えると、
実は、オイラのチャリ旅は、
2014年の冬前に中央アジアを走り切った時点で終わっていたのかもしれない。
日本に戻ってきた時、お世話になった旅友宅でよくそういう話をした。
ブログを読んでもらえばわかるように、
2015年以降は、太鼓と食べ物の話ばかり。
実際、タブラ、カレーそして餃子が面白くなり過ぎて、
正直、チャリで走ってる時間を、
タブラやカレー、餃子修行する時間に割り当てたいぞ、なんて思うようになっていた。
たぶん、あの頃から
オイラは旅をいつ終えても悔いはない気持ちになっていたんだと思う。
だから、今、ホントに終わる、という状況になっても、
今までとあまり気持ちの変化がない。
無理に終わることを盛り上げなきゃいけないものなのかな?
なんて思ったりしたが、
そういうことでもなかったのだ。
チャリ旅は面白い。
それは、今でもそう思う。
でも、それ以上に面白モノを見つけてしまった。
以前この旅に飛び出た時と一緒だ。
それまでやっていた仕事は楽しかった。
でも、それを辞めて飛び出したのは、
仕事以上に面白そうな、旅というものを見つけてしまったからだった。
たぶん、今やっていることに
きっぱりと区切りがつけられるかどうかは、
もっと面白い次にやりたいことが見つけられるかどうか、なのだろう。
友人宅で、
カレーや餃子や、チャイを振る舞うのが楽しい。
子供たちに打楽器を演奏してあげるのが楽しい。
日本に戻ってきてから、
チャリで走っているより、
そういう時間の方を楽しんでいる自分がいる。
たぶん、
オイラの次の旅は、
カレーや餃子、そして打楽器を深堀りしていくことなのだ。
そして、それはもう始まっている。
だから、ゴールの実家に辿り着いても、涙はでなかった。
なんて思いながら、家の門の前でチャリを止めていたら、
その音を聞き付け
「おかえり」と迎えに出てくれた、父と母。
思っていた以上に年老いていた、8年ぶりの父さん母さんの姿を見て、
なんだか、ちょっと涙がこみ上げるせつない気持ちになったのであった。

・・・と、いうのが
8年間のチャリ旅を終えた瞬間のオイラの今の正直な気持ちです。
終わりってもっと感激するモノじゃないの?
未練が残るモノじゃないの?
って
特にオイラのブログを長い間読んでくれた方々は思うのかもしれないなぁ・・・
なんか、もっとサービスした表現しなくちゃいけないなぁ・・・
なんて思ったりもしたのですが、そんな器用な男じゃないので(笑)
とにかく、
8年、2,906日に渡って続いた
折りたたみチャリによる世界一周旅は、無事終わりました。
ブログを通じて、一緒に世界旅を楽しんでいただいていた皆さん、
つたない文章に付き合っていただき、ありがとうございました。
こんな面白いことがやれているのだから、
せっかくだから、全てを書いてやろう、なんて思っていましたが、
ホントのことを言うと、
ブログに書けたことなんて、
オイラがこの旅で体験したことの1%にも満たないものです。
インターネットで調べれば全てが分かる・・・なんてことは幻想だ。
ということを旅をして思い知りました。
逆風でチャリを漕ぐ時の無力感、
大自然に包まれた時の至上の幸福感、
見ず知らずの人から親切にされることの驚きと喜び、
本当に知りたいことはそういうことなのに、
そういうことは、情報になってません。
うまく言語化できないからです。
それらを知るには、実際に旅に出るしかないんです。
逆に言えば、
旅先には、全ての答えがそこにあります。
いや、正確に言うと、
答えは自分の中にあるんですが、
旅がその答えを見えるようにしてくれるんです。
あ~、なんか終わりの心境を綴っていたら
とりとめがなく、終わらなくなってしまいました。
終わりの心境が終わらないって・・・(笑)
まぁ、しばらくは
ブログに、エピローグ的な話を綴っていくつもりなので、
この先は、その時にでも書くことにしよう。
とにかく、8年間、ありがとうございました!
8年間、本当にありがとう、相棒ファニーバニー!【チャリヨシさんの世界一周走行記録】
日数:2,906日(8年)
訪問国数:98か国(日本含む)
走行距離:63,621km
パンクした回数:224回
自転車を折りたたんだ回数:689回
消耗して棄てたタイヤの数:24本
交換したホイールの数:前後ホイール4本づつ
折れたスポークスの数:数え切れず
壊れた空気入れの数:3個
折れたスタンドの数:2本
リアキャリアが折れた数:5回
こけた回数:大コケ2回、中コケ2回
自転車を盗まれた回数:1回(取り返した)
盗難に遭った回数(上記以外):2回
走行中殺めてしまった動物の数:犬1匹
動物に噛まれた回数:1回
病院に行った回数:6回(狂犬病注射に5回)
チャリヨシ さんですね。ブログ見つけました。
旅行記少しずつ読ませてもらいます。